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Haunts

 

Photography

2023, sand, mouse, bee, pottery. 土、ネズミ、蜂、壺、他

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Haunts

 

スピリンド爺さんは、毛を外にひっくり返したエルクの皮の外套、特徴的な突き出たエルクの耳のついた頭飾り、エルクが雪の中に歩く音に似せるためにエルクの足の滑らかな毛皮で覆ったスキー板を着けて、体を前後に揺らしながら、エルクのように歩いていた。他方で、手には装填済みのライフル銃が握られており、帽子の下からは人間の目、花、口を備えた顔の下半分が出ていて、人間の男でもあった。「彼はエルクではなかったが、エルクではないというわけではもなかった」(ウィラースレフ 2018)

 

 

 

人形が纏う毛皮の、その内側の皮膜は、乾いた粘土に密着し、粘土はその内側の脂を吸い取っていく。また、その毛皮の内側が外に曝け出される時、肉を内包していた内は土に還ろうと向かい、毛皮を被る主体は毛皮を介して外界と繋がっていく。人と獣、肉と土、土と人、の交互が行われることにより、内と外は反転し続け、一体化していく。内と外が一体化する時、その中心の空洞内部には、人でもない、獣でもない、霊体の気配が立ち上がる。

 

ある物質の一部が対象物に移るとき、その痕跡が対象物に蓄積されることで、主体と他の物体との境界線は融和していく。例えば、肉体の一部が接触したり、付着したり、しみ込んだり、形状変化したり、など、まるで、肉体と外界世界が徐々に一体化していくように、主体と対象、内界と外界、精神と肉体、人間と世界のような、二極化構造の分解が行われる。非生命体に生命感が宿るとされるアニミズムは、このような物体同士の境界線が摩擦する運動の中で生まれるのかもしれない

 

本作は本物の動物の毛皮を被った人形の6枚の連続的な写真作品である。

人形は人を模した人間の記号である。あるべき内臓や霊魂の不在による中心の空洞性は、私たちの思いや想像力を無限に吸収し、人の気配なるものを纏っていく。人の皮を被った、しかし人ではない、生命の気配を人々はそこに感じるのである。

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